著: 金子由里奈(映画監督・視線人) 新宿からぎゅうぎゅうの中央線に乗って、車窓から薄まっていく東京をぼーっと見ていると、吉祥寺で音域を上げて、壁がめいっぱいに窓を埋める。それを超えても、まだ先だ。東小金井の静かなロータリーを超えて、孤立したドンキが見えてくる。降りた瞬間に、空に拍手するみたいに大きくて、なんか誇り高い駅のホームが大好きだった。 わたしは武蔵小金井に住んでいた。 5年前、インターネットで出会ったライターの高島鈴とルームシェアをはじめることになって、候補に東京の西の方が浮上した。京都で暮らしていたとき、鴨川と深い付き合いをしていたわたしの条件は「街に川があること」で、りんちゃんの条件は「駅の近くの大きな本屋」だった。野川の噂を聞きつけたわたしは武蔵小金井を提案し、大きなくまざわ書店もあるということで決めたわたしたちの城。ふざけた水色の外壁。頼りない薄い玄関。キッチンの冷たいタ

