【特集】BE:FIRST×ジャネット・ジャクソン、夢の共演! 音楽への愛とリスペクトが生んだコレボレーション、そこに至るまでの軌跡を読み解く

【特集】BE:FIRST×ジャネット・ジャクソン、夢の共演! 音楽への愛とリスペクトが生んだコレボレーション、そこに至るまでの軌跡を読み解く

2026年6月、兵庫、神奈川、愛知で開催されたジャネット・ジャクソンの来日公演「JANET JACKSON JAPAN 2026」。ジャネット自身のキャリアはもちろん、ジャクソン・ファミリーへのトリビュートもふんだんに織り込まれた今回のショーは、神奈川と愛知の各公演にスペシャルゲストとして日本人アーティストが出演したことでも話題となった。6月13日、神奈川・Kアリーナ横浜の初日には香取慎吾、6月17日の愛知・IGアリーナでの公演にはHANAが登場する中、Kアリーナ2日目、6月14日の公演でステージに立ったのが、6人組ボーイズグループ・BE:FIRSTだった。

ジャネットに先んじてステージに立った彼らは、“Rondo”を皮切りに全7曲をパフォーマンス。“Boom Boom Back”にジャネットの名曲“Rhythm Nation”をオマージュしたアレンジを施したり、昨年ベストアルバム『BE:ST』のリードトラックとしてリリースしたジャクソン5の“I Want You Back”のリメイクカバーを披露したり……MCで彼ら自身も繰り返しジャネットとジャクソン・ファミリーへのリスペクトを口にしていたが、その思いは音楽に乗って、おそらく普段彼らの音楽に触れていないであろうジャネット・ファンたちも含めて、会場に集まったオーディエンスに広がり、ジャネットの登場を前に会場の空気を温め、ひとつにするのに一役買っていた。

  • 【特集】BE:FIRST×ジャネット・ジャクソン、夢の共演! 音楽への愛とリスペクトが生んだコレボレーション、そこに至るまでの軌跡を読み解く - 撮影:Tariq

    撮影:Tariq

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2021年、SKY-HIが立ち上げた「BMSG」の第1回オーディション『THE FIRST』で結成されたBE:FIRSTは、同年11月にシングル『Gifted.』でデビューすると、瞬く間にシーンを担うグループへと成長した。2023年のアリーナツアーを経て、2024年に初めてドームの舞台に立つと、2025年には初となるワールドツアーも敢行。『NHK紅白歌合戦』にも2025年まで4年連続で出場するなどJ-POPシーンで確かなポジションを築き上げる一方で、世界のフィールドにも力強く挑戦する中、今年でデビュー5周年イヤーを迎えた。そのアニバーサリーを記念して、5月には東京・味の素スタジアムで2日間のスタジアムライブを開催。2日間で約10万人のオーディエンスを前に、これまでの軌跡と音楽に対する飽くなき探究心を見せつける圧倒的なショーを作り上げてみせた。

デビューから約4年半、今やBE:FIRSTは押しも押されもせぬ人気グループとなった。だからこそ今回のジャネット・ジャクソンのようなビッグネームのステージにも呼ばれたわけだが、彼らがあのステージに立った理由はそれだけではない。単に今をときめく人気グループであるゆえに、ゲストのオファーをされたわけではないのだ。なぜ彼らがこれほどまでのスピードで階段を駆け上がってくることができたのか、そしてすべてのシングルやアルバムでリスナーを圧倒するような音楽的体験を生み出すことができているのか。それはひと言で言ってしまえば、彼らが常に音楽を信じ、過去から現在までのあらゆる音楽に多大な愛と敬意を込めて、真摯に表現し続けてきたからにほかならない。

【特集】BE:FIRST×ジャネット・ジャクソン、夢の共演! 音楽への愛とリスペクトが生んだコレボレーション、そこに至るまでの軌跡を読み解く

敏腕のプロデューサーやトラックメイカーと組んで音楽的なセンスやクオリティを追求し続けているというプロダクション的な挑戦もさることながら、BE:FIRSTの音楽において重要なのは、そこに揺るぎない信念と、熱と、音楽に懸ける思いのようなものが常に濃密に渦巻いているということだ。“Mainstream”や“Masterplan”、“Spacecraft”に“BE:FIRST ALL DAY”……これまで彼らは、ことターニングポイントとなる楽曲においては、現在の日本のポップシーンにおいて決して王道ど真ん中とは言えないハイブローなサウンドを鳴らしてきた。そうした音楽がこれほどまでに支持され、さらにその支持を拡大させ続けているのは、彼らが常に音楽の楽しさと喜びを感じていることが、音源やライブでの彼らの歌、ラップ、ダンス、そしてパフォーマンス時の表情や仕草から、はっきりと伝わってくるからだ。新しい楽曲に挑戦するたびに自分自身の音楽のキャパシティを広げ、スキルを磨き、知識を蓄え続けてきたからこそ、BE:FIRSTは今も成長し続けることができている。ボーカルやダンスのディテールに込められたニュアンスひとつとっても、また、メンバー自身の役割の重要度がどんどん増している楽曲制作においても、彼らの表現はデビュー当時とは比較にならないほど進化を遂げている。

そのプロセスは、それこそベストアルバムを通して聴けば手に取るようにわかる。あるいは、2024年の『Masterplan』以降のシングルに収められているメンバーそれぞれのソロ楽曲にも、そうした成長の痕跡が刻まれている。個々人がフルコミットで生み出したジャンルも時代性もさまざまな楽曲たちは、昨年11月にグループとは別の道を歩むことを決めた元メンバーのRYOKIも含め、全員がアーティストとしての成長を求め続けてきたドキュメントだ。それぞれの音楽的志向や趣味がそのままグループの表現に直結するとは限らないが、だとしても、そこで得た経験は間違いなくグループの血肉となり、次の楽曲やライブに活かされる。その結果が、奇跡的に実現した“I Want You Back”のリメイクカバーであり、その“I Want You Back”をひとつのクライマックスに据えて万単位のオーディエンスと音楽の喜びを分かち合ったスタジアムライブであり、そして今回のジャネット・ジャクソンとの夢の共演だったのである。


昨年の“I Want You Back”のカバーは、これまでBE:FIRSTが重ねてきた経験と膨らませ続けてきた音楽への思いの結実だった。何せジャクソン5の“I Want You Back”といえば、アメリカの、いや、世界のブラックミュージック史において燦然と輝くクラシック中のクラシックである。ヒップホップにおけるサンプリングのネタとしてもこれまでいくつもの楽曲を彩ってきた、いわゆる「大ネタ」だ。それを日本人のボーイズグループがカバーするというのは生半可な挑戦ではない。だが、だからこそ彼らにはこの曲を歌う必然があった。この曲のリリースに際して、プロデューサーのSKY-HIはジャクソン5をブラックミュージックのルーツであると同時に「近代ボーイバンドとしてのプロトタイプ」と位置付けるメッセージを発信していた。同じくボーイバンド、ボーイズグループとして自分たちの音楽を追求し続けているBE:FIRSTだからこそ、最大限のリスペクトをもってこの曲の魅力を引き出すことができるはずだ、という強い思いがそこにはあった。

そのために彼らはあえて単なるカバーではなく、日本語の歌詞やラップをミックスした「リメイクカバー」という形を選んだのだ。さらにそうした思想はサウンドメイクにおいても徹底されている。この曲は1970年代に作られたアナログ・ミキシング・コンソールの名機「Neve 8068」を使って生バンドの音を録音し、そのアナログ音源をサンプリングしてトラックを作るという手の込んだ方法を用いているのだが、歴史を大事にしながらそれを自分たちの感性でモダナイズしていくというのは、まさにBE:FIRSTがデビュー以来積み重ねてきた挑戦にほかならない。培ってきた音楽へのリスペクトとそれを表現するスキル、その集大成があのBE:FIRST版“I Want You Back”だったのである。


6月14日、Kアリーナのステージに立ったジャネット・ジャクソンは、30曲を超えるレパートリーをパワフルに披露した。そのクライマックスは、兄マイケル・ジャクソンの映像と共に披露された“Scream”(ジャネットとマイケルの唯一のコラボレーション楽曲)、そして“Black Cat”を経て、“Interlude: Pledge”から“Rhythm Nation”へとつながる、アルバム『Rhythm Nation 1814』の冒頭の再現だった。そんな華々しいフィナーレののち、ジャネットはBE:FIRSTの6人とともにステージに戻ってくる。興奮冷めやらぬ中、彼らが一緒に披露したのが、今回の共演直前の6月12日にリリースされたコラボ曲“Doesn't Really Matter (Remix)”だった。

“I Want You Back”同様、原曲の歌詞に日本語のラインが追加され、新たな形で生まれ変わった“Doesn't Really Matter”。しかも今回は、当たり前だがジャネット本人も歌っている。レコーディングは今年4月に日本で行われたそうで、BE:FIRSTの6人にとってもとんでもなく貴重な経験だったのではないかと想像するが、実際にこの曲を聴くと、ジャネットの曲にBE:FIRSTが参加したのでも、BE:FIRSTのカバーに「ご本人」が登場したのでもない、もっと有機的なコラボレーションであったことが伝わってくる。会話するように交差する7人の声とタイトなビートが、これが過去の焼き直しではなく2026年のリアルな「共作」であることを物語るめちゃくちゃクールな1曲である。


すでに公開されているこの曲のミュージックビデオには、リハーサルなどに加えステージで共にパフォーマンスしたときの映像も使われている。まだ観ていない人にはぜひチェックしてほしいのだが、ジャネットとBE:FIRSTが、歌やダンス、つまり音楽を通して理解し合い、コミュニケーションしている様子がしっかりと記録されている。SOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、LEOの6人も、ジャネットも、とても楽しそうだ。SOTAがジャネットとアイコンタクトし、7人で呼吸を合わせてステップを踏むシーンを観ていると、そこには世代やキャリアの差などないように思える。それこそ、格や名前ではなく音楽を真ん中においた愛情で両者が交わり合えたことの証だろう。あのとても美しい光景こそ、BE:FIRSTというグループの音楽との関係が生んだものなのだと思う。(小川智宏)

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